こんにちは!株式会社ゼニタの服部です。本日は高齢者の転倒とバランス機能についてお話をさせていただきます。

 一般的なご高齢者のバランス能力の低下は、脳血管障害などにより平衡感覚が障害された疾患の障害とは異なり、加齢による全身的な運動機能の低下によって起こるとされています。その全身的な運動機能の衰えによって転倒する危険性が高くなるのです。
高齢者の運動機能の低下には、①姿勢の変化、②重心動揺の変化、③加齢的変化の大きく3つがあります。高齢者の転倒の要因でもあるこの3つの特徴を理解して転倒を予防していきましょう!

 バランス機能の評価のポイント
①高齢者の立位姿勢の変化として、約30%の方々が脊椎の後弯が起こり「猫背」の姿勢になります。このまま猫背の姿勢をとってしまうと、歩幅が減少してしまったり、重心が後方にシフトして転倒しやすくなってしまいます。
②「重心動揺」について解説します。
人が立っている時に姿勢が崩れそうになると、その揺らぎの大きさや速さ、方向などを無意識的に感知し、立ち直り反射によって修正しています。高齢者の場合は、この揺らぎの感知や適切な修正がされにくいため、重心動揺が大きくなり転倒の危険性が高まります。目を閉じたまま(閉眼)体が揺れずに立っていれるか、重心動揺を評価します。
③「加齢変化」について解説します。一般的に加齢により痛覚・触覚などの「皮膚感覚」、筋肉の収縮を感知する「深部感覚」が低下すると言われています。そのため感覚優位のバランス保持から視覚優位のバランス保持に変化していきます。しかしながら、高齢者の場合は、老眼や白内障などにより視力低下や狭窄をきたしてしまうことも多くなり、足元の段差に気づかず転倒してしまうことがあります。

加齢変化と転倒の危険性について
平衡感覚の低下→前庭神経繊維の減少によりバランス機能は低下します。
体性感覚の低下→感覚の低下により体の反応が遅くなります。
老眼、白内障→視力低下や視野の狭窄があり目が見えにくくなります。
認知障害→注意機能が低下します。
筋力低下→太もも、お尻などの筋力が低下します。
二重課題遂行能力の低下→他に注意が向くと足元などに注意が払えなくなります。
低栄養→低栄養やビタミンD欠乏などによるサルコペニア(虚弱)を引き起こします。
眠剤→眠剤の影響によりふらつきが起こります。
めまい→めまいや起立性低血圧の影響によりふらつきが起こります。

 高齢者の転倒予防のためのバランス評価は、ご利用者の転倒の危険性を判断するためのテストです。様々なバランス評価がある中で、今回はバーグバランススケール(BBS)をご紹介します。

 バーグバランススケールは、最大スコアは56点で、カットオフ値(※1)は、0-20点でバランス障害あり,21-40点で許容範囲のバランス能力,41-56点で良好なバランス能力とされ、信頼性も高いテストです。しかし、評価項目が14項目で評価に10〜15分を要すため理学療法士などの専門職に評価してもらう必要があります。(※1)カットオフ値とは、転倒の危険性の高い郡と危険性の低い郡をわける値です。転倒のリスクは、「身体的なもの」「認知・心理・行動的なもの」「環境的なもの」「課題や動作によるもの」など様々あり、高い精度で転倒を予測していくことは困難です。そのため、理学療法士などの専門職と共にいくつかのテストを組み合わせることで転倒の予測精度を高めていきます。

 千種さわやかクリニック通所リハビリテーションでは、バーグバランススケールをスタッフ全員が理解しご利用者様のバランス機能の評価を行い、リハビリテーションに取り入れ自宅での注意喚起と予防プログラムや生活指導を行わさせていただいています。

 

いくつかのバランス訓練のやり方について紹介します。

(1)ランジトレーニング

【目標回数】

10回×2セットを目安に行いましょう。

つまづく・ふらつく・滑るなどの状況において瞬時に足を踏み出したり、片脚で体重支持したり、位置を修正するための身のこなしができるためのバランス能力を獲得することが目標となります。運動の際は、バランスを崩さない範囲で足を開き、重心を「前後移動」「左右移動」させましょう。

(2)片足立ちトレーニング

【目標回数】

10回×2セットを目安に行いましょう。

片脚立位です。目を開けた状態での片足立ちでは、14秒以下になると運動器不安定症のリスクが高まるとされています。バランスが不安定な方は、壁や椅子などに手を添えて行うことをお勧めします。また、開眼立位が可能であれば、次に閉眼立位と難易度を高めて取り組むこともお勧めします。足をあげる際は、背中が丸くならないように意識しましょう!

(3)タンデム歩行トレーニング

タンデム歩行と呼ばれる運動です。バランス評価の一つでもあり、治療プログラムとして応用できるトレーニングです。運動の際は、かかととつま先を付けて歩くように意識します。可能であれば、床にラインを引くなど目印を付けて訓練することをお勧めします。

【目標回数】

10歩を目安に行いましょう。

(4)段差昇降トレーニング

段差昇降の運動です。段差昇降は、片足で体重を持ち上げる力やバランスを鍛えることのできる応用動作です。まずは手すりを使用して安全に運動していきましょう。自宅に上がり框や階段がある方には、ぜひ取り組んでいただきたい訓練です。

【目標回数】

5往復を目安に行いましょう。