手根管症候群は、手根管内圧と症状とがリンクするため、運動療法も手根管内圧を低下させる手段を選択することが必要である。正常手根横靭帯をエコー観察した我々の結果では、手指の運動で手根横靭帯の正中から尺側部が挙動することを認めており、この動きが内圧調整に関与していると考えている。従って、手根横アーチの開大・縮小を利用した手根横靱帯へのストレッチ、深指屈筋(FDP)、浅指屈筋(FDS)腱や正中神経の手根管内滑走の改善により症状の軽減が得られる例も多い。Guyon管症候群に対しては、同部への持続圧迫因子を排除した上で、尺骨神経の滑走訓練を実施するが、屈筋支帯に鍼治療を行なった後に徒手的運動療法を行なうと効果的である。ドケルバン病は、第1区画の隔壁との関係が指摘されているが、リハビリでの対応は不可能である。エコーで腱の腫れを確認しながら、セルフケアや生活指導を行ないつつ、舟状骨の撓側移動を制限する装具やテーピング、長母指外転筋(APL)と短母指伸筋(EPB)の筋腹への選択的ストレッチ、筋膜リリースを実施する。ドケルバン病やばね指は、安静時において明確な圧痛点(+)、動作時痛(+)、超音波エコー所見でドップラー反応(-)である場合は、疼痛部位に対してエコーで正確に深さを確認して鍼治療を行なうと効果的である。突き指は、スポーツや転倒時に受傷することが多いが、マレットフィンガーへの進展には注意したい。終末腱の治癒過程に留意しながら、指伸筋と虫様筋、骨間筋のそれぞれの機能的関わりを理解した運動療法を行なうことがポイントである。